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■前山寺「未完成の完成塔」<重文>・真言宗
前山寺:同市東前山
参道は「黒門」から200Mばかり、ところどころに石段があり両側に並ぶ大きなサクラ・マツ・ケヤキの大樹の中を進むと「山門」がある。
1200年ほど前の弘仁年間(平安時代初期)弘法大師により創建されたと伝えられ、「独鈷山・前山寺」が正式な名称。寺の西南に位置する弘法山が奥の院となっていて、弘法大師が仏前で使う”独鈷”埋めたのが名の由来。600年ほど前には、四国讃岐(香川県・弘法大師の出生地)の善通寺より長秀上人がやってきて寺の規模を拡大し信濃でも有名な学問所とした。
また、塩田城の祈願寺という性格上、各時代の城主の保護を受け格式の高い寺として続いている。
未完成の完成塔:
さて、いったい塔のどこが未完なのだろうか?
@.一二三層ともそれぞれ角材が4本突き出ている。
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「貫(ぬき)」といって、縁を付けるためのもので上に板を張り「勾欄(こうらん)」を付ける予定だったようだ。 |
A.一層には扉や窓があるのに上層にはない。
B.二層三層の柱に切込みが入れてあるが、これは「長押(なげし)」を付けるためのもの。ところが切り込みだけ。※鴨居の上部のところに床と平行に付けられる化粧材
C.柱の上の”組物”の中央にあたるところの「ます」という四角い穴には「束(つか)」という縦の材を入れ、上からの重みを受けなければならないが、これがない。
かえってすっきりした姿になるので、これで「完成」という。 |